2018/11/27 21:50

木々の隙間から覗く日暮れ時の空は、何もない場所で見る空より一層深く温かな色をしている。つかの間の景色を箱に収め、家に持ち帰ることができたなら。

きっと、その日から夜の帳を心待ちにする特別で素敵な日常が始まる。


ひとつひとつ手作業で制作したあかり作品です。

寝付けない夜や、のんびり過ごしたいそんな時。

お酒や読書のお供も素敵ですが、ゆらゆら、ぼんやりと灯るあかりを傍らに置いてみてはいかがでしょうか。


4つのこだわり


点灯時に浮き上がる繊細な曲線模様

 

夕陽匣は2つの表情を持っています。普段は温かな夕陽色の小匣におおらかな曲線模様の枠が被せられたような見た目ですが、あかりを灯すと、途端に中にあるもう一つの細やかな模様が現れます。

木々の隙間からうかがい見る太陽と、葉脈の向こうに透かし見た太陽。

わたしの頭にはそんなイメージがありますが、きっと見る人によって様々な解釈があるのでしょう。会話や質問を重ねて人を知ることも素敵ですが、同じものを見てそれぞれの考えを共有するひとときがわたしには貴重で得難いものに感じます。

このあかりを、そうした時間を過ごすためのきっかけにしていただければと思います。


床と接する部分を底面の内側に収めた内脚デザイン

 
脚の主張が少なく、宙にふんわりと漂うような浮遊感があります。また、点灯時に底面の曲線模様が影として床に映り込むことも内脚タイプの作品の特徴です。


柿渋染めの和紙で昔ながらの風情を

夕陽匣だけにかかわらず、ゆらの作品の多くは素材となる和紙を自作の柿渋で染めています。柿渋染め、と聞いて首をかしげる方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にご説明しておきたいと思います。

柿渋染めとは、渋柿を用いて染色をすること。まだ青い時期にもぎとった柿を砕き、絞り出した果汁を一年以上貯蔵して発酵させます。時間の経過とともに褐色となり、一般には長く貯蔵したものほど良いとされています。この作品に使用した柿渋は、約3年貯蔵したものになります。

わたしの住まいは田舎であるためか、こうした素材の話はちょっと歩けば昔話がてらに教えてくださる方があちらこちらにおられます。そのお話からの引用になりますが、元来、柿渋は日本においても古くから利用されており、生活のあちこちにあったそうです。例えばその撥水性から番傘や漁網、耐久性に優れることからうちわや和紙製品、建材への塗布など。以前は市販品の柿渋を購入していたのですが、その話を聞いたわたしは実際に自分で作ってみたくなり、3年ほど前に自作したものが夕陽匣に使用した柿渋です。



安全なLED電球に温かみを


わたしが柿渋を利用したきっかけは、LED電球の光に温かみを感じられず、けれども安全性や消費電力の節約を無視できなかったからでした。LED電球の長所を併せ持った、けれども温かみのあるあかりは無いものか。そう考えて試行錯誤した結果、柿渋染めの夕陽のような色に行き着きました。

 

夕陽匣をご自宅に迎え入れ、一日の終りを豊かなものにしてみませんか?